リアル
バスケットボール漫画『SLAM DUNK』の作者でおなじみの井上雄彦が描くもうひとつのバスケットボール漫画『リアル』。
連載開始間もない頃、知人から薦められていたものの「スラムダンク」の二番煎じという先入観を持っていたので、なかなか読む気になれずにいた。
しかし、実際に読んでみるとそれは全くの思い込みであった。
「リアル」は「スラムダンク」の二番煎じなどでは決してなく、また単なるスポーツ漫画でもない。
最近、単行本を買ってまで読みたいと思う漫画などほとんど無くなったが、この作品は一回読んで終わりというような単純な物語ではない。
障害者スポーツである<車いすバスケットボール>を題材にしているため、作品には多くの障害者が登場する。
難しいテーマであり、一つ間違えれば読み手に誤解や偏見を与えかねない。
しかし、作品で描かれている世界は、虚構とは思えないほど現実味を帯びており、誤解や偏見が生まれる余地など感じられない。
厳しい社会の中で人間が直面する数々の苦悩の感情を疑似体験でき、それを乗り越えていくための貴重な考え方がいくつも含まれているのである。
もはやコミックという娯楽の範疇を超えた人生哲学書と言っても過言ではない。
リアルに登場する主人公は3人。
◇高橋久信
西高バスケ部キャプテン。何をやってもトップクラス。いつも取り巻き達を引き連れ、努力する人間をあざ笑っていたが、交通事故に遭い脊髄損傷のため下半身麻痺という障害を背負ってしまう。
◇戸川清春
中学陸上界短距離走のスーパースター。病気で片足を切断し、一時は絶望の底に突き落とされながらも、車いすバスケットボールと出会い情熱を取り戻す。
◇野宮朋美
西高バスケ部員。高橋とは犬猿の仲。
ある日、ナンパした女をバイク事故に遭わせ、障害を負わせてしまったことで、自分自身の人生までメチャクチャに狂わせてしまう。
3者それぞれの視点からバスケ・車いすバスケ・障害との関わり方、そして心の変化や成長を描いている。
中でも「野宮」というキャラクターには非常に大きな感銘を受けた。
バイク事故で他人に障害を負わせてしまってから、高校中退、バスケも辞め、仕事も見つからない日々が続く。 何を目指していいのかも分からない失意の生活から抜け出そうと、野宮が自分の生きる道を模索する中で発する言葉は、下手な人生哲学書や自己啓発本なんかを読むよりも、ずっと説得力がある。
「リアル」は週刊ヤングジャンプで不定期連載のため、単行本は年に1巻しか発売されない。
1999年連載開始以降、現在6巻まで刊行。
高橋は、障害を受け入れる事が出来ず、未だ自暴自棄の日々から抜け出せていない。
戸川が所属する車いすバスケのチームは、ようやく目標に向けてメンバーが一丸となってきた。
相変わらず何を目指していいのか分からない野宮は、今を生きる事で自分の道を進む。
まだまだストーリーは序盤といった感じで、これからの3人の展開が興味深い。
最終回まで20年以上はかかりそうだ。井上氏はこの作品の執筆をライフワークとするつもりなのか?
ヤンジャンが廃刊になったらどーすんだろ?
7巻は今年秋発売予定。
7巻を読んだときに相変わらず同じような感動をしているようでは、自分自身何も学んでいない事になる。
今よりもマシな人間になっていたい。
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